ブランドが持つ無形の価値や資産であり、企業の競争力を左右する重要な要素である「ブランドエクイティ」。強いブランドエクイティを築くことで、価格競争に巻き込まれにくくなり、顧客ロイヤリティや市場での交渉力を高めることができます。
企業にとって重要なブランドエクイティを高めていくためには、広報PR活動が重要です。
本記事では、ブランドエクイティの基本的な概念やメリット、構成要素、さらに向上のための具体的な方法を解説します。ブランド価値を最大化し、ビジネスの成長を実現するための指針として、ぜひご活用ください。
ブランドエクイティとは
ブランドエクイティとは、ブランドが持つ無形の価値や資産のことを指します。単なるブランド名やロゴのデザインを超え、企業全体の戦略的資産を指しており、生活者がそのブランドに対して抱く認知、信頼、感情的なつながり、さらには市場での地位や競争力に反映されます。
ブランドエクイティが高い企業は、顧客や株主など多様なステークホルダーからの支持を得やすく、価格競争や市場変動の影響を受けにくいことが特徴です。ブランドエクイティを強化することは、短期的な売上向上だけではなく、長期的な顧客関係の構築や持続可能な競争優位性の確保に寄与するため、経営戦略やマーケティングにおいても不可欠な要素となっています。

ブランドエクイティを高めるメリット
ブランドエクイティを高めるメリットは、具体的には「価格競争に巻き込まれにくくなること」「顧客ロイヤリティの向上」「市場での交渉力の向上」などが挙げられます。それぞれの詳細について紹介します。
メリット1.価格競争に巻き込まれにくくなる
ブランドエクイティが高い企業は、顧客がブランドに対して高い価値を感じているため、製品やサービスの価格を競争力の基準としなくても顧客に選ばれる傾向があります。
信頼できるブランドやプレミアムなイメージを持つブランドは、競合他社より高い価格設定であっても購入されることが多いでしょう。価格以外の要素で選ばれることで、利益率を向上させるだけでなく、収益の安定化にもつながります。また、価格競争を避けることで、持続的な成長とブランド価値の維持が可能となります。
メリット2.顧客ロイヤリティが向上する
ブランドエクイティを高めることで、顧客との信頼関係が強まり、ロイヤリティが向上します。高いロイヤリティを持つ顧客は、競合他社の製品やサービスが魅力的であっても、自社ブランドを選び続ける傾向があります。顧客ロイヤリティが高まると、リピート購入が増加し、LTV(顧客生涯価値)の向上につながるでしょう。
また、ロイヤルな顧客は口コミやレビューを通じて新規顧客の獲得にも貢献してくれる、ブランドアンバサダーの役割も果たします。
このように、顧客ロイヤリティの向上は、持続可能なビジネス成長に欠かせない要素です。ブランドエクイティを高めることで、顧客ロイヤリティを高められるのは大きな利点だといえるでしょう。
メリット3.市場での交渉力が向上する
強いブランドエクイティは、企業に市場での優位性をもたらします。例えば、流通業者や取引先との価格や条件交渉において、信頼されるブランドはより有利な立場を得ることができます。また、生活者からの高い評価は、製品ライン拡張や新市場への参入を容易にします。
市場での交渉力が向上することで、サプライチェーン全体の効率化や新たなビジネスチャンスの創出も期待できます。さらには、採用力の強化につながったり、資金調達の際の交渉力にもなりえます。
このように、ブランドエクイティは、企業の戦略的パートナーシップ構築にも寄与するといえるでしょう。
メリット4.採用力や投資家からの評価も高まる
ブランドエクイティが高い企業は、商品やサービスだけでなく「企業そのもの」への信頼性が高まります。これにより、求職者にとっては「安心して働ける企業」として魅力が増し、採用力向上につながります。
また、投資家や株主に対しても、ブランド価値が財務的な安定性や将来性の裏付けとなり、投資判断における大きな加点要素となります。短期的な売上や市場シェアだけでなく、中長期的な人材確保や資金調達の面でもブランドエクイティの強化は効果を発揮するのです。
ブランドエクイティの5つの構成要素
ブランドエクイティの概念を提唱したデービッド・A. アーカー氏によると、ブランドエクイティは5つの要素で構成されているといわれています。次に、ブランドエクイティを構成する5つの構成要素「ブランド認知」「ブランド連想」「知覚品質」「ブランドロイヤルティ」「その他のブランド資産」の詳細について解説します。
1.ブランド認知
ブランドエクイティの1つ目の構成要素は「ブランド認知」です。ブランド認知とは、生活者がそのブランドをどれだけ知っているか、または覚えているかを指します。
生活者が購入意思決定を行う際に、特定のブランドを思い浮かべる頻度や優先順位が高いほど、そのブランドの認知度が高いといえます。
例えば「プレスリリース配信といえば、PR TIMES」といったように、サービスや商品の利用を検討している人にその状況で思い出してもらえるような状態は、ブランド認知されているといえるでしょう。
ブランド認知は、広告やプロモーション活動だけでなく、製品やサービスの品質、口コミ、メディア掲載などによっても形成されます。高いブランド認知は、生活者に安心感を与え、購入のきっかけを作る重要な要素です。
2.ブランド連想
「ブランド連想」は、生活者がそのブランドに対して抱くイメージや感情、記憶を指します。例えば、「信頼性が高い」「環境に配慮している」「品質が良い」といったポジティブな連想は、ブランド価値の向上に寄与します。
ブランド連想は、ロゴやデザイン、広告のトーン、ストーリーテリングなどを通じて構築されます。商品やサービスを利用したことがある人であれば、品質やサービスの内容、その商品やサービスを使ったときの感情や記憶なども含まれます。
強いブランド連想は、生活者がそのブランドを他社製品よりも選ぶ理由となります。
3.知覚品質
「知覚品質」とは、生活者がそのブランドの製品やサービスに対して抱く主観的な品質評価を指します。あくまでも主観的な評価のため、実際の品質と乖離があるケースもあり、ブランドイメージやマーケティング活動によって影響を受けることもあります。
高い知覚品質を持つブランドは、プレミアム価格で販売することが可能となり、収益性を向上させることが可能です。
また、品質評価が高いことは、生活者の満足度やロイヤルティの向上にもつながります。
4.ブランドロイヤルティ
顧客が繰り返しそのブランドを選び続ける忠誠心を「ブランドロイヤルティ」といいます。
この要素が強いブランドは、リピート購入が多く、新規顧客獲得にかかるコストを抑えることができます。
また、顧客は競合他社の製品や価格に影響されにくく、ブランドの安定的な収益に寄与します。ブランドロイヤルティを築くためには、優れた顧客体験の提供や信頼関係の構築が不可欠だといえるでしょう。
5.その他のブランド資産
「その他のブランド資産」には、特許、商標、チャネルの優位性、流通ネットワークなどが含まれます。これらの資産は、競合他社が模倣することが難しく、ブランドの独自性を高める要素です。
また、ブランド価値を測定し、マーケティング戦略を策定する際の基盤となることもあります。
ブランドエクイティを高めるための5つのポイント
ブランドエクイティを高めるには、戦略的な施策を複数の観点から実施することが重要です。顧客の心にブランドを強く刻むためには、メッセージの一貫性や社内外の調和が欠かせません。以下では、ブランドエクイティを高めていく際のポイントを詳しく解説します。

ポイント1.ブランドメッセージを明確にする
ブランドエクイティを高める第一歩は、顧客にとって魅力的で一貫性のあるメッセージを作ることです。ブランドが提供する価値や信念を明確にし、それをすべてのタッチポイントで伝えましょう。
広告やウェブサイト、SNSなどさまざまな媒体で発信する際には、それぞれ異なったクリエイティブを使ったり、複数のターゲットやステークホルダー向けに情報発信することもあるでしょう。媒体やキャンペーン・イベントなどに合わせてクリエイティブを変更したとしても、コアとなるものは同じメッセージを発信することで、ブランドイメージが統一され、顧客の信頼を築きやすくなります。
ポイント2.広報PR活動・マーケティング活動を実施する
ブランドを顧客に認知してもらうには、積極的な広報PR活動が不可欠です。例えば、メディア掲載やイベント開催、プレスリリースの配信、SNSなど、多様なチャネルを活用しましょう。また、オウンドメディアを運営し、自社の専門性や価値を発信することも効果的です。これにより、ブランドの存在感が高まり、顧客との接点が増えます。
ポイント3.インナーブランディングを同時進行する
従業員がブランドの価値を理解し、自信を持って顧客に伝えられるよう、インナーブランディングも並行して行うことも重要です。社内研修や社内報などを活用し、ブランドのビジョンやミッションを共有しましょう。
従業員一人ひとりがブランドのアンバサダーとなることで、顧客との接点で一貫性のある体験を提供できます。
ポイント4.顧客接点全体で一貫性を保つ
ブランドエクイティを高めるには、広告やプレスリリースなどの広報活動だけでなく、カスタマーサポートや営業現場、店舗体験など、あらゆる顧客接点で同じメッセージや価値観を提供することが不可欠です。たとえ製品が優れていても、接客やサポートで矛盾が生じれば、ブランドに対する信頼は損なわれてしまいます。
従業員への研修やガイドラインの整備を通じて、社内全体でブランドの方向性を共有することが重要です。一貫性のある顧客体験こそが、長期的なブランドロイヤルティにつながります。
ポイント5.データを活用して効果を定期検証する
ブランド活動の効果は、感覚的な評価だけでは正しく測れません。認知度調査やNPS®などの定量データに加え、SNSでの口コミや検索トレンドの推移といった定性的データも組み合わせて分析することが求められます。
例えば、キャンペーン実施前後で顧客の好意度スコアがどう変化したかを追跡すれば、施策の有効性を把握できます。また、四半期や年度単位での定期的な測定を行い、施策の改善につなげる仕組みを持つことで、持続的にブランドエクイティを高めていくことが可能になります。
ブランドエクイティの測定方法
では、ブランドエクイティを正確に把握するためには具体的にどのように測定したらよいのでしょうか。以下の方法を活用することで、ブランドが顧客にどのように認知され、評価されているかを把握し、改善のヒントを得ることができます。
1.ブランド認知度調査
ブランドがどれだけ認知されているかを測定する調査は、ブランドエクイティを構成する「ブランド認知」を調査するためによく実施されます。
認知度調査には、顧客にブランド名を提示して知っているか尋ねる「提示認知」や、ブランド名を記憶から挙げてもらう「非提示認知」などの手法があります。
ブランドが市場に浸透している度合いや、競合と比べた認知度の優位性を把握できます。定期的に実施することで、認知度の変化を測定することが一般的です。
2.NPS®調査
NPS®調査とは、顧客がブランドを他者に推奨する意欲を測る指標です。「このブランドを友人や同僚に推薦しますか?」といった質問をし、0〜10のスコアで回答してもらいます。
推奨者の割合から批判者の割合を引いたスコアがNPS®となり、ブランドロイヤリティの高さを示します。
NPS®調査についての詳細は、以下の記事からご確認ください。
3.顧客満足度調査
顧客満足度調査とは、その名の通りブランドの提供価値が顧客の期待にどの程度応えているかを測定する調査です。
商品の品質、サービス、カスタマーサポートなど複数の要素を評価することで、ブランド体験全体の満足度を把握できます。満足度が高いほど、リピート購入やポジティブな口コミが期待できます。
4.市場シェアの分析
市場全体における自社ブランドの占有率を分析する方法で、ブランドエクイティを想定することも可能です。
市場シェアが高いブランドは、顧客に選ばれる確率が高く、ブランドエクイティが強いことを示します。また、競合ブランドとの比較を行うことで、自社の立ち位置や課題を明確にできるでしょう。
5.SNS・口コミの分析(ソーシャルリスニング)
現代のブランド価値を測るうえで、SNSや口コミの分析は欠かせません。ユーザーの生の声は従来のアンケートでは得られない即時性とリアルさを持っており、ブランドへの好意度や話題性を把握する指標となります。
例えばXやInstagramでの言及数、ポジティブ・ネガティブの感情分析、特定のキャンペーン投稿の拡散状況などを継続的に観察することで、施策の効果や潜在的な課題を発見できます。ソーシャルリスニングは、リスク管理と同時に、ブランド改善のヒントを得る重要な手法といえます。
6.ブランドアセスメントモデルの活用
ブランドエクイティを体系的に測るには、学術的に確立されたフレームワークを活用する方法があります。代表的なのがデービッド・アーカーの「ブランドエクイティの5要素モデル」や、ケビン・ケラーの「ブランド構築ピラミッド」です。これらを用いると、認知からロイヤルティ形成までのプロセスを定量的・定性的に把握でき、課題がどの段階にあるのかを明確にできます。
実務においては、外部調査会社やブランドコンサルティングと連携して測定を行うことで、より信頼性の高いデータを得られるでしょう。
ブランドエクイティの向上には広報PR活動が重要
ブランドエクイティは、企業が顧客や市場から得る価値そのものといえます。ブランドエクイティ向上のためには、構成要素や測定方法をしっかり理解し、戦略的に施策を実行することが求められます。ブランド認知やロイヤリティの向上、広報PR活動を通じた価値の発信など、多角的なアプローチが必要です。
特に広報PR活動は、ブランドの存在を広め、顧客や社会とのつながりを強化する重要な手段です。ブランドメッセージの一貫性を保ちながら、信頼感や共感を醸成することで、競争力のある強いブランドを構築できます。また、顧客ロイヤリティの向上や市場での交渉力強化といったメリットも、効果的なPR活動により実現可能です。
ブランドエクイティを高めるためには、ブランドの内外に向けて価値を伝える努力を惜しまず、継続的な測定と改善を行うことが成功への鍵となるでしょう。本記事を参考に、自社で取り組みできる施策を検討してみてはいかがでしょうか。
PR TIMESのご利用を希望される方は、以下より企業登録申請をお願いいたします。登録申請方法と料金プランをあわせてご確認ください。
PR TIMESの企業登録申請をするPR TIMESをご利用希望の方はこちら企業登録申請をするこのシリーズの記事
- あわせて読みたい記事ステップメールとは?効果的に実施する5つのポイントや実施の流れまで基礎知識を解説
- 次に読みたい記事GTM(ゴートゥーマーケット)とは?重要な理由や進め方、指標など基礎知識を解説
- まだ読んでいない方は、こちらから広報の手段・方法とは?具体的な12の広報活動例と成功に導くコツ・TIPSを解説
- このシリーズの記事一覧へ