メーカー・製造業は、スマートフォンや飲料、日用品から産業機械まで、多様な「モノ」を社会に届ける企業を指します。新製品のリリースや技術発表が頻繁に行われる一方で、その魅力を生活者や取引先、メディアに正しく伝えるには、戦略的な広報PR活動が欠かせません。特に、多くの製品を年間通じて発表する大手メーカーにとっては、計画性と一貫性のある情報発信がブランド価値の向上に直結します。
本記事では、メーカー・製造業が広報PRにつながる企画を考える際の3つのポイントやプレスリリースを活用するメリットについて解説。併せて、参考となる事例を3つご紹介します。
メーカー・製造業がPRにつながる企画を立てる3つのポイント
メーカーや製造業でPRにつながる企画はさまざまなものがあります。自社製品やサービスの特徴を深く理解していることはもちろん重要ですが、そのほかにも大切にしたい点がいくつかあります。メーカー・製造業がPRにつながる企画を考える際の3つのポイントをご紹介します。

ポイント1.自社製品に対する偏った理解を捨てる(顧客目線)
企画を考えるうえで自社製品やサービスについて深く理解することは大切です。しかし、企業が想像しているよりも生活者は自分が愛用している製品について知らないものです。また、企業側が考えているほど、製品について知りたいと思っている生活者も多くはありません。
PRにつながる企画を考えるときに必要なのは、自社製品に対する偏った理解を捨てることです。生活者が知ってくれている、知りたいと思ってくれているという思い込みを捨て、製品特性を一から伝えられるような、生活者にとって何らかの発見がある企画を作ることを意識しましょう。
ポイント2.経営理念やブランドコンセプトとの整合性を意識する(自社目線)
今は昔に比べて、製品そのものだけでなく、その製品を作る企業の姿勢が重視されています。話題づくりのために企業イメージからかけ離れた企画を行っても、生活者はなかなか受け入れてくれません。
大切なのは、経営理念やブランドコンセプトとの整合性を意識することです。企画の骨子から詳細な内容まで、企業として貫きたい理念やコンセプトが反映されているかどうかを都度確認しましょう。
ポイント3.継続性のあるテーマやコンセプトにする(社会目線)
社会性のある話題と関連付けた企画は多くのメディアで取り上げられる傾向にあります。しかし、単発で終わってしまうものはブランドイメージや製品の認知度向上にはあまりつながりません。なぜなら、社会課題は一度の企画で解決するようなものではなく、継続することで少しずつ改善されていくものだからです。
社会目線の企画を考える場合、毎年実施できるように継続性のあるテーマやコンセプトを考えましょう。長いスパンで社会課題に向き合う企画の枠組みを作ることを意識してみてください。
メーカー・製造業の具体的なPR施策
自社の新製品や新サービスをより多くの方に知ってもらうには、PR施策が欠かせません。基本として押さえておきたいメーカー・製造業の具体的なPR施策をご紹介します。
SNSを利用したPR施策
1つ目はSNSを利用したPR施策です。Twitter、Instagram、TikTok、YouTubeとSNSごとにユーザーの特性が異なるので、企画内容に適したプラットフォームを選択しましょう。
SNSを利用したPR施策では、キャンペーンを行うのが一般的。メーカー・製造業であれば「◯◯の日」に合わせたプレゼントキャンペーンが好相性です。拡散性の高いプラットフォームを選べば、新製品や既存製品の認知度向上が期待できます。
また、動画を使ったSNSでのPRもおすすめ。テキストを読まず動画や写真を楽しむ生活者に対して効果的に自社製品をPRできます。ストーリー性がある動画、インフルエンサーやタレントとのコラボ動画など、さまざまな内容が考えられます。
イベント型のPR施策
2つ目はイベント型のPR施策です。オフライン・オンラインのどちらでも行えるのが大きな特徴。記者向けのメディア発表会や生活者が参加できる一般ユーザーの体験会など、場所をレンタルすれば各方面にPRできる良い機会となります。
コロナ以降は、オフライン・オンラインを組み合わせたイベント型PRが主流になってきています。オンラインイベントはネット環境さえあれば居住地を問わないため、参加できる方が増えるのが魅力です。
しかし、オフラインイベントと内容の違いが見られない場合、現地に足を運んでくれる方が少なくなってしまいます。オフライン・オンラインを組み合わせたイベント型PRをする際は、それぞれの魅力を最大限活かせるよう、参加して得られる情報や体験などに違いを付けることを忘れないようにしましょう。
Webを使ったPR施策
Webを使ったPR施策は、SNSやイベントで自社製品を知ってくださった方の受け皿となるようなイメージで行います。
例えば、プレスリリース配信サービスの利用が考えられます。メディア関係者に直接プレスリリースを送れるだけでなく、一般生活者も見られる形で配信されるのが特徴。製品名やサービス名で検索した際、上位に表示されることが多いので情報の受け皿として活用できます。
また、Web広告もWebを使ったPR施策のひとつです。自社製品と親和性の高い生活者に対して情報をリーチすることが可能。加えて、SEO対策も重要です。SNSやイベントで製品を知ったユーザーが検索した際、自社サイトや自社コンテンツが上位に表示されることで購入を促進できます。
CSR・サステナビリティ活動を通じたPR施策
近年、メーカーにとってCSRやサステナビリティ活動は単なる社会貢献にとどまらず、重要なPR施策の一環となっています。環境対応型の製品開発や地域社会との協働プロジェクトは、生活者や取引先からの共感を得やすく、ブランドの信頼性を高めます。
広報活動においては、単なるCSR報告ではなく、ストーリー性を持たせ、企業の姿勢を示すことで長期的なブランド価値向上につなげられます。

メーカー・製造業が取り組みを企画化するときの注意点
製品やサービスの認知拡大や売上向上につながるPR企画を考えるのは非常に大切です。しかし、話題になればどんな企画でも良いというわけではありません。メーカー・製造業が取り組みを企画化するときに知っておきたい注意点について解説します。
1.ブランドイメージを毀損しない企画になっているか
多くの方がSNS上で情報を閲覧する現代では、新製品のPR施策としてギフティングやインフルエンサーを活用した企画を取り入れている企業が増えています。生活者の目に触れる機会を増やせるので効果的ではあるものの、ブランドによってはそのギフティングが裏目にでてしまうケースがあります。
例えば、高級感や特別感というイメージがあるブランドの場合、ギフティングは適していません。また、インフルエンサーを起用をする場合、キャスティングには注意を払う必要があります。認知の拡大を重要視しすぎてブランドイメージを毀損することになっていないか、企画時点で必ず確認しましょう。
2.メディアフックとなるポイントが設定されているか
第三者であるメディアに情報を取り上げてもらう際、「この情報は価値がある」「この情報を知りたいと思っている人が多くいる」と思ってもらう要素のことをメディアフックと呼びます。
取り組みを企画化する際は、このメディアフックが非常に重要です。新製品の紹介だけでは取り上げる理由として弱いため、企画検討時にプラスできる要素がないかを考えましょう。例えば、製品の限定パッケージとして人気のイラストレーターを起用することなどが考えられます。
3.企画対象の設定は適切か
PR施策を企画する際、対象となる層の設定は意識すべきポイントです。なんとなくSNSでキャンペーンをやるのと、対象を設定してからSNSキャンペーンをするのとでは効果に大きな差が出ます。
どんな属性の方にリーチしたいのか、どの年齢層に知ってほしいのかは明確にしたうえで企画の内容を詰めましょう。例えば、SNSであればどのプラットフォームを使うかによってリーチできる年齢層は異なります。Web広告をうつすにしても、ターゲット層の設定は必須です。対象を明確にすることで、施策実施後の効果測定もしやすくなります。
4.短期的な話題性に偏らず、持続可能なテーマか
メーカーのPR企画は、一時的な注目を集めるだけでなく、継続的に社会や顧客に価値を提供できるテーマであることが重要です。流行に乗った企画は話題性を得やすい反面、ブランドとしての一貫性を欠くリスクもあります。製品ライフサイクルや企業の中長期的なビジョンに沿ったテーマ設定を意識することで、短期的な注目と長期的なブランド力強化を両立させることができます。
メーカー・製造業における広報PR体制の作り方
メーカーが広報PRを継続的に行うには、社内の体制づくりが重要です。次に、広報PR体制をつくるときに重要なポイントを解説します。
社内の情報収集フローを整える
製造業では研究開発や生産現場に多くの情報が眠っています。広報が正しい情報を発信するためには、現場担当者や技術者との連携を強化し、日常的に情報を共有できるフローを構築することが不可欠です。
定例会議での情報収集や、専用フォームを活用したネタ出しの仕組みづくりが効果的です。現場の情報を収集しやすいような体制を構築しましょう
外部パートナー(PR会社・代理店)との連携方法
広報体制が小規模なメーカーでは、専門性を持つ外部パートナーとの連携が効果的です。代理店に依頼する場合は、自社の強みや課題を共有し、目的を明確に伝えることが重要です。
定期的な情報交換を行い、自社内にない視点を取り入れることで、より幅広いメディア露出や施策展開が可能になります。
メーカー・製造業がプレスリリースを配信するメリットと事例3選
プレスリリースを配信するメリットは、新製品の情報や企画の内容を多くのメディアや記者などに届けられることです。特にプレスリリース配信サービスを使えばメーリングリストを簡単に作成できて、最低限の工数で大きな効果をあげられます。
コラボ製品の新発売情報を配信|シチズン時計株式会社
時計の製造・販売を手がけるシチズン時計株式会社が「THE PARK SHOP」とコラボして作った新製品の情報を配信したプレスリリースです。デザインが特徴的な製品ですが、プレスリリース配信では多くの画像を表示設定できるため、情報をテキストだけでなく視覚的に伝えられます。
メールでは容量の問題や圧縮したデータを解凍しなければならないなどの手間がありますが、プレスリリース配信ではそうした問題や手間が発生しないのがメリット。伝えたい情報を厳選し、過不足ない状態でメディア関係者や生活者に届けることが可能です。
参考:公園(PARK)がテーマのライフスタイルブランド『THE PARK SHOP』とのコラボモデル登場『Q&Q SmileSolar』
店頭キャンペーン情報の配信|株式会社シンビジャパン
化粧品の製造・販売を手がける株式会社シンビジャパンは、新大久保のコスメショップとタイアップした店頭キャンペーン情報のプレスリリースを配信。実際に製品を手にとって試せる場所があることを伝えつつ、店頭でサンプルがもらえるプレゼントキャンペーンを実施していることを情報として追加しています。
オフラインのイベントは、ブランドやその製品について知っている生活者に情報を届けることを第一に考えましょう。イベントに参加してもらえる可能性が高いうえ、実際に手に取ることでよりブランドへの愛着を強めることができます。
参考:シンビハーブコスメの<期間限定>店頭販売プロモーション!《使って・試して・もらっちゃおう》
節水アクションの啓蒙プロジェクトを配信|レキットベンキーザー・ジャパン株式会社
日用品や医薬品などを扱うイギリス発のメーカー、レキットベンキーザー株式会社は、自社が扱う食洗機専用洗剤に関連した取り組みとして、節水アクションの啓蒙プロジェクトについて配信しています。
このプロジェクトはガイドブック『地球の歩き方』とコラボし、さらに「世界水の日」を掛け合わせた企画。水をテーマに『水の惑星の歩き方』を発刊し、一部の大型スーパーやドラッグストアにて数量限定で配布されました。
自社製品の良さを前面に出すのではなく、企業として取り組んでいる社会課題についてまずは知ってもらうという姿勢が垣間見えるのがポイント。本リリースと冊子を通して、生活者に水にまつわる課題について考えてもらうきっかけを作っています。
参考:食洗機を使えば手洗いよりも1回あたり約50L*も節水できる!『水の惑星プロジェクト』~”地”よりも”水”が多い”地球”のこと、楽しく学んで節水しよう!~ 3月22日「世界水の日」より開始
メーカー広報・PR活動でありがちな失敗と改善策
メーカーや製造業における広報PRは、製品の魅力を伝えるだけでなく、社会や顧客にとっての価値を発信することが求められます。しかし実務の現場では、製品中心に偏った情報発信や、配信タイミングの不備、メディア目線の欠如など、効果を妨げる課題が生じやすいのも事実です。
これらの失敗は、ちょっとした視点の転換や準備の工夫によって改善が可能です。最後に、製造業の広報でよくあるつまずきと、その解決策を整理します。
製品スペックに偏りすぎて伝わらない
メーカー広報では、自社の技術力や製品性能を強調したくなるあまり、どうしてもスペック重視の発信に偏る傾向があります。しかし、生活者や取引先にとって本当に重要なのは、利用する場面や得られるベネフィットです。
数値や機能を並べるだけではなく、「誰がどのように使い、どんな価値を得られるのか」という利用者目線のストーリーを描くことで、情報がより具体的で共感を得やすくなります。ぜひ発信内容を工夫してみてください。
情報解禁のタイミングを逃す
プレスリリースにおいて、配信のタイミングは成果を大きく左右します。例えば、新製品発表やイベントに合わせた最適なスケジュールを逃すと、ニュース性が薄れて注目度が下がってしまうことがあります。業界全体の展示会や季節的なトレンドを意識し、計画的に配信日を設定することが重要です。
特に、同業他社の動向を把握しつつ、自社のリリースが埋もれないタイミングを狙うことで、メディアに取り上げられる確率を高めることができます。戦略的なスケジューリングは、広報効果の最大化に直結します。
メディア目線を欠いたプレスリリース
プレスリリースは単なる告知文ではなく、メディアにとって「ニュース価値」があるかどうかが掲載判断の基準となります。宣伝色が強すぎる内容は広告と見なされ、報道対象として扱われにくくなります。そこで重要なのが、社会的背景や市場性を織り交ぜ、なぜその取り組みや製品が今必要なのかを示すことです。
業界全体の課題や生活者へのメリットと関連づけて伝えることで、メディアが記事化しやすくなり、結果的に露出拡大につながります。広報担当者は、自社視点ではなく「メディア読者にとっての意義」を意識して文章を設計する必要があります。
メディア関係者の意見を知りたい方は、以下の記事もぜひ参考にしてみてください。
メーカー・製造業のPR企画は生活者に新たな価値を提供し、学びがある内容にすることが大切
メーカー・製造業から新たに発売される製品の数は、飲料だけでも年間1,200を超えています(※)。日々、新情報が解禁されるなかで自社製品の認知度を高めるには、ありきたりなPR企画ではなく生活者にとって学びがある内容にすることが大切です。顧客・自社・社会とそれぞれの視点に立って企画内容を考え、今までになかった価値を届けられる企画を考えましょう。
▼参考URL
※ 商品数・新商品推移(2017~2021年) | 統計 | 全清飲
メーカー・製造業の広報PRに関するQ&A
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